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階段にて [街角の情景]

 駅のロータリーに掛かる歩道橋の階段にて

   その一

  長い階段を、一組の若いカップルが降りて行く。
  大学生位だろうか。男の子は、足に怪我をしているらしい。手摺りにつかまりながら、一歩一歩ゆっくりと降りて行く。
  女の子は、かばうように、その傍らを静かに歩いていた。けれど、あと五、六段というところに差し掛かると、女の子は突然階段を一気に駆け下りた。降り切って、軽やかに振り返ると、まだ階段の途中にいる男の子に向かって、笑顔で言った。
  「健康って、いいよね!」
  丁度、男の子と並ぶ位置を歩いていた僕は、思わずそちらを見る。男の子は、はにかんだような笑顔を見せた。
  「うん。健康っていいよ」
  男の子は、一段づつそっと階段を降りて、女の子に追い付く。女の子は、優しい笑顔を見せて、怪我をしている男の子をかばうようにそっと寄り添う。そして、二人はゆっくりと歩き始めた。

   その二

      別の日、同じ場所にて

  三、四歳の小さな女の子が、母親と叔母らしい、二人の若い女性に、両脇から手を引かれて、階段を降りて行く。小さな子供には、少し長すぎる階段を、一歩一歩ゆっくりと。
  少し若い感じの叔母らしい女性は、小さな女の子の妹と思われる赤ん坊を抱いている。母親が、しっかりと女の子の手を握っていられるように、赤ん坊を妹に託している様子だった。
  その小さな女の子は、真剣な面持ちで、恐る恐る一歩づつ、小さな足を運んで行く。そして、ようやく降り切って、ホッとしたように立ち尽くす小さな娘を、母親はしっかりと抱きしめた。
  「よかったね。降りられたね!」そう言いながら、娘を抱き上げて頬ずりをする。
  「もう、大丈夫だね。ちゃんと降りられるね!」傍らの、叔母らしい若い女性も、優しい笑顔で声を掛ける。
 小さな女の子は、嬉しそうに、可愛い声を立てて笑った。

 


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舗道にて [街角の情景]

          

駅から続いている、片側に商店が並ぶ舗道を、僕は歩いていた。
向こうから、ベビーカーを押して若い母親が歩いて来る。その後から、その母親の娘らしい、小さな女の子が走り出て来た。
五・六歳のその女の子は、母親を追い越してに前に出ると、いきなり、スライディングをするような格好で、舗道の上に転んだ。
女の子は、驚いたように目を丸くして、こちらを見た。しかし、助け起こすには、距離があり過ぎる。
僅かに、戸惑っているうちに、母親が幼い娘に、明るく優しい声で言った。
 「まあ、素敵な転び方!」
その声に、女の子は、舗道の上でくるりと回転すると、誇らしげな顔をして、素早く立ち上がった。
そして、笑顔を見せる母親に向かって、スキップで駆け寄り、寄り添うように傍らに並んだ。
それから、親子はゆっくりと歩き出した。
すれ違うときにふと見ると、女の子の小さな手は、弟か妹の乗ったベビーカーのハンドルを、しっかりと握り締めていた。

        

 


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